葛西のらーめん「からしや」が好きする話。

江戸川区葛西の名店「からしや」──私の人生で一番好きなラーメン
    2007年、私は就職を機に初めて東京で暮らすことになった。
    生まれ育った場所を離れ、不安と期待が入り混じるなかで選んだのは、江戸川区葛西。
    当時の私は、まったく土地勘がなく、知り合いもほとんどいない。初めての一人暮らしは、生活のリズムも人間関係もゼロから作る必要があった。
  
    そんな状況で心の支えになったのは、休日の散歩と食べ歩きだ。
    当時のSNSといえば、今のようなX(旧Twitter)やInstagramではなく、mixiが主流。
    そこで地元コミュニティに入り、「このあたりでおいしいラーメン屋は?」と投稿したことがきっかけだった。
    数人から「東葛西に『からしや』っていう変わった名前のラーメン屋があるよ」と教えてもらった。
  
初めての「からしや」訪問
    店は環七通り沿いにあり、「からしや」と大きく書かれた看板が目を引く。
    扉を開けるとカウンター席とテーブル席が少しだけ。
    厨房からは香ばしい匂いと、店主の「いらっしゃい!」という声。初めて訪れた私の胸は高鳴った。
  
    看板商品はからしめん。スープのないまぜそばスタイルで、辛味と旨味が一体となった一杯だ。
    辛さの奥に甘みやコクがあり、香ばしい油の香りが食欲をそそる。
    最高にうまいのだが、実は私はスープありのラーメンを頼むことが多い。
    そのスープが、からしやのもうひとつの真骨頂であり、深い旨味とコク、香ばしさが一体となった味わいは格別だ。
  
炙りチャーシューとの出会い
    そして、何よりも感動したのはチャーシューだった。
    厚切りで、表面はしっかりと炙られて香ばしく、中はしっとり柔らかい。
    脂身はとろけるようで、赤身は旨味がギュッと詰まっている。
    噛むほどに肉の甘みが広がり、スープとの相性も抜群。
    その日以来、私はからしやの炙りチャーシューらーめんの虜になった。
  
    
    移転の歴史と現在の店舗
    からしやは、私が初めて訪れた東葛西の店舗から、一度別の地域へ移転した後、現在の中葛西へと落ち着いた。
    今の店舗は、外観に大きな白い看板が掲げられ、夜は温かい光に照らされている。
    店の前を通ると、炙ったチャーシューの香りが漂い、自然と足が止まってしまう。
  
    青森からでも食べに行く理由
    現在、私は東京を離れ、青森に住んでいる。
    しかし、年に数回は、このラーメンを食べるためだけに東京へ行く。
    新幹線や飛行機を使ってでも、この味を求めてしまう。
    世の中には数えきれないほどのラーメン屋があり、有名店も多い。
    それでも、私にとってのナンバーワンは変わらない。
    「これを超えるラーメンには、今までも出会えていないし、たぶん今後も出会えないだろう」──そう思わせるだけの魅力が、からしやにはある。
    私は青森県人では一番からしやを愛している自信がある(笑)。
  
味の秘密と魅力
    からしやの魅力を一言で表すのは難しいが、あえて言うなら「バランス」だ。
    辛さ、甘さ、旨味、香ばしさ、それらが絶妙なバランスで混ざり合っている。
    麺は中太の縮れ麺で、スープをしっかりと絡め取る。
    トッピングのネギやメンマは、主張しすぎず、全体を引き立てる存在だ。
    そして何より、炙りチャーシューの香りが全体をまとめ上げる。
  
    他店でも炙りチャーシューを出す店はあるが、からしやのそれは別格だ。
    火加減、炙り時間、肉質、下味──すべてが計算されていて、食べた瞬間に「これだ」と思わせる説得力がある。
  
思い出とともにある一杯
    からしやは、ただおいしいラーメンを提供する店ではなく、私にとっては人生の節目をともに歩んできた存在だ。
    初めての東京暮らし、不安な日々の中での小さな楽しみ。
    仕事でうまくいかない時、励ましのように感じられた一杯。
    そして今では、遠く青森から会いに行く“友人”のような存在になっている。
  
最後に──からしやへの感謝
    私はこれからも、年に数回、この味を求めて東京へ行くだろう。
    おいしいラーメン屋は数あれど、「自分の中の一番」は一生変わらないものだと思う。
    からしやのラーメンを食べると、「ああ、帰ってきたな」と感じる。
    そんな場所を持てることは、とても幸せなことだ。
  
    もし葛西近辺に行くことがあれば、ぜひ足を運んでほしい。
    きっと、あなたのラーメン人生にも強い印象を残す一杯になるはずだ。
  
    
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